コラム

大腸カメラ検査

便潜血検査、「2回のうち1回だけ陽性」は大丈夫?――1回でも精密検査が必要な理由

健康診断の便潜血検査で「2回のうち1回だけ陽性」。この結果を見て、「1回だけならたまたまだろう」と受け流していませんか。大腸がんは、いま日本で罹患数が最も多いがんです(国立がん研究センター・全国がん登録)。それでも早く見つかれば治りやすいがんでもあります。「1回だけ陽性」が何を意味するのか、検査の仕組みから順に解説します。

便潜血検査は「何を」見ているのか――肉眼では見えない0.1mg単位の血液

現在の健診で使われている便潜血検査は「免疫法」と呼ばれる方式で、ヒトのヘモグロビン(血液の成分)だけに反応する抗体を使い、便に混じったごく微量の血液を検出します。見た目がまったく普通の便でも、大腸のどこかで出血していれば拾い上げることができます。

ちなみに、ひと昔前の「化学法」は動物の血液(肉料理)にも反応したため検査前に食事制限が必要でしたが、免疫法はヒトの血液にしか反応しないため食事制限は不要です。また、胃からの出血はヘモグロビンが胃酸や消化酵素で変性してしまい抗体が反応しにくいため、免疫法の便潜血は実質的に「大腸からの出血」を調べる検査になっています。胃の検査の代わりにはならない、というのは意外と知られていないポイントです。

なぜ「2日分」も提出するのか――進行がんでも、毎日は出血していない

大腸のポリープやがんは、蛇口のように出血し続けているわけではありません。表面が便でこすれたり崩れたりしたときにだけ、間欠的に出血します。このため、報告により幅はあるものの、進行した大腸がんですら、1日分の便だけでは陽性にならないことがあるとされ、1日法の感度はおおむね70%前後、2日法にすることで80〜90%程度まで高まると報告されています。

つまり2日法は「2回チャンスを作って、間欠的な出血を捕まえる」ための設計です。ここから、「2回のうち1回だけ陽性」の意味がはっきりします。1回だけの陽性は、偶然ではなく、出血していた瞬間を検査がとらえたシグナルなのです。

「1回だけ」と「2回とも」で、危険度は違うのか

たしかに、2回とも陽性だった人のほうが、精密検査で大腸がんが見つかる割合は高いことが知られています。しかしそれは「1回だけなら安全」という意味ではありません。1回のみ陽性の人からも、大腸がんや前がん病変のポリープは一定の割合で見つかります。だからこそ、全国のがん検診の判定基準は「2回中1回でも陽性なら要精密検査」で統一されています。回数は「精密検査を受けるかどうか」の判断材料にはならないのです。

「もう一度便潜血検査」がすすめられない理由

「再検査で陰性なら安心できるのでは」と考える方は多いのですが、厚生労働省の指針や関連学会は、陽性後の対応として「便潜血の再検査ではなく、大腸内視鏡などの精密検査」を明確に示しています。理由は上で述べた通り、出血が間欠的だからです。病変があっても再検査で陰性になることは普通に起こり、その「陰性」は何の証明にもなりません。むしろ安心材料に使われて受診が遅れる、いちばんもったいないパターンを生みます。

精密検査=大腸カメラでわかること

  • 出血の原因(ポリープ・がん・炎症・痔など)を粘膜を直接見て確認できます
  • 疑わしい部分はその場で組織を採取(生検)し、確定診断につなげられます
  • ポリープは大きさや形によってはその場で日帰り切除が可能です
  • 当院では静脈内鎮静法(うとうと麻酔)に対応し、結果は検査当日にご説明します

放置した場合に何が起こるかは大腸カメラは「いつまでに」受けるべきかで、検査への不安が強い方は大腸カメラが「怖い」「忙しくて行けない」方へで詳しく解説しています。

大腸カメラの流れ・費用・当院の体制については、便潜血検査で陽性と言われた方へで詳しくご案内しています。

「偽陽性」「偽陰性」はどのくらいあるのか

便潜血検査は優れたスクリーニングですが、万能ではありません。陽性の多く(8〜9割以上)は、調べてみると痔・炎症・異常なしなど「がん以外」です。痔からの出血、女性の場合は月経血の混入などが、いわゆる偽陽性の代表的な原因です。「陽性=がん」ではまったくないので、必要以上に恐れる必要はありません。

一方で見逃せないのが偽陰性です。出血の間欠性に加えて、意外な落とし穴が検体の保存状態です。便の中のヘモグロビンは時間の経過や高温で分解が進むため、採便から提出まで日が空いたり、夏場に高温の場所へ置いたりすると、本当は陽性なのに陰性と出てしまうことがあります。採便後は冷暗所で保管し、できるだけ早く提出する――これだけで検査の精度は上がります。

こうした限界があるからこそ、「陽性が1回でも出たら精密検査」「陰性でも血便などの症状があれば受診」が原則になっています。

費用の目安(3割負担)

検査内容3割負担の目安
大腸カメラ(観察のみ)約6,000円
大腸カメラ+ポリープ切除約15,000円〜
組織検査(生検)追加時約4,500円〜

費用の詳細や高額療養費制度については大腸カメラの費用をご覧ください。

よくあるご質問

Q. 痔があります。陽性はそのせいではないですか?

痔からの出血でも陽性になりますが、検査の結果からは「痔の血」か「大腸の血」かを区別できません。痔と大腸の病気を同時に持っている方も珍しくないため、痔がある方こそ一度大腸カメラで確かめておく意味があります。詳しくは便潜血陽性を痔と放置する危険をご覧ください。

Q. 来年の健診が陰性だったら、受けなくてもいいですか?

いいえ。翌年が陰性でも、今回の陽性が「間欠的な出血をとらえた」可能性は消えません。陽性が一度でも出たら、大腸カメラで確かめるのが原則です。

Q. 精密検査はどこで受けられますか?

当院(横浜市南区・吉野町駅すぐ)で、事前診察から大腸カメラまで院内で完結します。土曜・日曜午前(完全予約制)の検査にも対応しています。

Q. 陰性だった年も、翌年また受ける意味はありますか?

あります。便潜血検査は、毎年続けて受けることで大腸がんによる死亡を減らせることが、複数の大規模研究で証明されている数少ない検診です。厚生労働省の指針でも40歳以上に年1回の受診が推奨されています。1回ごとの感度の限界を、毎年の繰り返しで補う設計だからこそ、「陽性が出た年に精密検査へ進む」ことがセットで重要になります。

関連ページ

045-253-2112 09:00~12:00/15:00~18:00