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潰瘍性大腸炎と大腸内視鏡 ―「本当の治癒」とがん化リスクを見極める
潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、良くなったり悪くなったり(再燃)を繰り返す病気です。「症状が落ち着いているから大丈夫」と思っていても、内視鏡で見ると炎症が残っていたり、逆に見た目はきれいでも再燃してしまったりと、見た目と実態が一致しないことがあります。
さらに、炎症が長く続くと大腸がんのリスクが高まることも知られており、潰瘍性大腸炎の方にとって、定期的でていねいな大腸内視鏡はとても重要です。この記事では、「本当に治っているか」をどう見極めるか、そしてがん化リスクへの向き合い方を、研究の視点も交えてお伝えします。私はこの潰瘍性大腸炎の精密内視鏡の研究に携わってきました。
なぜ「落ち着いている時こそ」大腸内視鏡が大切なのか
潰瘍性大腸炎の治療目標は、症状を抑えるだけでなく、内視鏡で見て炎症が消えている状態(粘膜治癒)を目指すことにあります。粘膜治癒が得られると、再燃や入院、手術のリスクが下がることが分かっているためです。
しかし、症状がないからといって炎症が消えているとは限りません。逆に、内視鏡的にはきれいに見えても再燃する方もいます。だからこそ、症状の有無にかかわらず、定期的に内視鏡で粘膜の状態を確認すること(サーベイランス)が欠かせないのです。
「見た目の治癒」だけでは不十分 ― 細胞レベルの治癒
ここに、長年の課題がありました。内視鏡スコアが最も良い状態(見た目がきれい)でも、その後に再燃してしまう方が一定数いるのです。「見た目の治癒」と「本当の治癒」にはギャップがあるということです。
この点について、粘膜の「杯細胞(ねんえき=粘液を出す細胞)」の状態を、細胞レベルまで拡大して観察する研究に携わってきました。研究では、杯細胞の状態を観察することで、見た目がきれいな方でも将来の再発リスクをより正確に予測できる可能性が報告されています。しかも、その場で(生検=組織を採らずに)判断する助けになると期待されています。「何度も組織を採られるのがつらい」という患者さんの負担を減らすことにもつながる、大切な視点です。
潰瘍性大腸炎の「がん化リスク」と光学診断
潰瘍性大腸炎に伴ってできる腫瘍(UC関連腫瘍)は、通常の大腸ポリープよりも見つけにくく、平坦で境界がはっきりしないことが多いため、内視鏡での判断が難しいことが知られています。
研究では、病変の表面の模様(pit pattern)に加えて、病変の「境界」の所見を組み合わせると、内視鏡で取り切れる病変かどうかの見極めが向上することが報告されています。一方で、最新の内視鏡技術をもってしてもUC関連腫瘍の光学的な診断には依然として課題が残ることも、複数の研究を整理したレビューで示されています。
だからこそ、潰瘍性大腸炎の方の大腸内視鏡では、「どこを、どこまで、どう見るか」という専門的な視点が一層重要になります。
当院での潰瘍性大腸炎の大腸内視鏡
こうした研究で得た「何を、どこまで見るべきか」という視点をもとに、当院では潰瘍性大腸炎の方の大腸内視鏡をていねいに行い、炎症の評価とがん化リスクの確認に努めています。
- 定期的なサーベイランス:症状が落ち着いている時こそ、粘膜の状態を確認します
- 苦痛への配慮:鎮静剤やCO2送気を用い、できるだけ楽に受けていただきます
- 連携体制:より高度な精密検査や治療が必要と判断した場合は、専門の医療機関へ速やかにご紹介します
潰瘍性大腸炎と長くつき合っていくうえで、信頼できる内視鏡のパートナーがいることは大きな安心につながります。気になることがあれば、どうぞご相談ください。
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参考文献(著者として関与した研究)
- *Dig Endosc.* 2022.(超拡大内視鏡による杯細胞観察と再発予測)[PMID: 34816494]
- *Gastrointest Endosc.* 2026.(UC関連腫瘍の境界所見とpit patternによる深達度診断)[PMID: 40780500]
- *Dig Endosc.* 2022.(潰瘍性大腸炎の光学的診断に関するシステマティックレビュー)[PMID: 35445457]
文・院長 髙階 祐輝(日本消化器内視鏡学会 専門医)/研究歴:昭和医科大学横浜市北部病院 消化器センター
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。